その画面の中の,秘書のような,執事のような人物は,「フィル」という名前だった。本当に近い未来,フィルに会える日が,やってくる。
アップル社のハンドヘルド機についての噂が多く出てきている。だが,ハンドヘルド機にする最大の問題は,大きさ。ノート型よりも小さくするにはキーボードを排し,手書き文字認識か音声認識を搭載することになる。そんなハンドヘルド機の噂が実現すれば,アップル社が過去に掲げた,ナレッジナビゲータの原形がお披露目されることになる。それは近日中の実現は難しいが,決して不可能ではない。
アップルが1988年に発表した未来の端末が,ナレッジナビゲータだ。コンピュータの最終形態,マッキントッシュの目指す果てとして,ナレッジナビゲータはあった。“ナビ”の画面には一人の人物(エージェントと呼ばれる秘書のような存在)が座っていて,彼に話しかけ,彼がそれに音声で答えていきながら,操作されていく。
「ハロー,ナビ」と話しかけると「ハロー」と答える。「メールは来ている?」と訊くと「3通届いています。読みますか?」と訊いてくる。「この論文に反する意見が3年前くらいにあったような気がするんだが…」と悩んでいると「データベースには4年前にケン・モールトン博士が反対する論文を書いています。その論文をダウンロードしますか?」と答えてくれる。そこには,現在のコンピューターとの接し方のパラダイムをくつがえす,異質ななにかがある。その異質さとは,コンピューターとの本当の意味での接続,を示している。そんな未来へ,あと一歩。
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